保全努力のおかげでアフリカのサイに希望の兆しが-IUCNレッドリスト

2020319日,スイス・グラン発 (IUCN) – アフリカのクロサイは絶滅危惧カテゴリー「深刻な危機CR」のままであるものの,密猟の根強い脅威に対抗する保全努力のおかげで,ゆっくりではあるが,個体数が増加しつつあることが,本日付けの『IUCN絶滅危惧種レッドリストTM』の更新版で明らかになった。

South-western Black Rhino

2012年から2018年までの間,アフリカ全体の野生クロサイ(Diceros bicornis)個体数は推定4,845頭から5,630頭へと年率2.5%の割合で増加した。個体群モデルによれば,今後5年間でゆっくりではあるものの,さらに増加すると予測されている。

IUCNレッドリストには現在116,177種が掲載されており,そのうちの31,030種が絶滅の脅威にさらされている。

「アフリカのサイは絶滅と無関係ではないものの,クロサイの個体数は継続的に緩い回復基調にある。クロサイが生息している国での膨大な努力が功を奏していることの証左で,保全が機能していることを国際社会に対して強く思い起こさせるものである。とは言え,密猟と密輸が重大な脅威のままであることから,安心してはいけない。国内外の協力を得て,現在進行中の密猟対策と積極的な個体群管理を続けていくことが不可欠である」とIUCN事務局長代行のグレーテル・アギラー博士は述べた。

「アフリカのサイで見られるこの進展は,献身的な保全行動により成し遂げられた結果である。地域住民の保全努力への関与とそれから得られる利益を増大させることが極めて重要である。国際,国内,そして地方での関係者が協力して取り組み,生物多様性の危機に対処する必要がある。今後10年間の保全課題を設定するうえで,アフリカのサイのような絶滅危惧種を保護するためには現場で働いている人たちの声を一層拡大していくことが重要である」とIUCN保全グループのグローバルディレクターのジェイン・スマート博士は述べた。

クロサイの個体数の増加は,主として継続的な法取り締まり努力と個体群管理措置の成果である。そのひとつは,個体群の繁殖率を高め,分布域を拡張するため既存の生息域から新しい場所へと特定のクロサイを移動させたことである。クロサイの1亜種である南西クロサイ (D. b. bicornis)は,以前は「危急VU」と評価されていたが,過去3世代の間に十分な個体数の増加があり,今回新しく「準絶滅危惧NT」と分類された。このほか現存する2亜種がおり,南東クロサイ(D. b. minor) と東クロサイ(D. b. michaeli)は「深刻な危機CR」のままである。これは,1970年代から1990年代半ばにかけての大きな減少によるものである。これら現存する3亜種は,回復途上にあるものの,保全努力がこれからも続くことが条件である。

アフリカのもうひとつのサイはシロサイ(Ceratotherium simum)である。クロサイよりもずっと個体数が多く,IUCNレッドリストでは「準絶滅危惧NT」のままである。亜種ミナミシロサイ(C. s. simum)の個体数は,2012年から2017年までの間,推定21,300頭から18,000頭へと15%減少した。これにより,2007年から 2012年までのシロサイの個体数増加が相殺されることとなった。最近のこの減少は,シロサイの世界最大個体群を有する南アフリカのクルーガー国立公園での高レベルの密猟が大きな原因である。もうひとつのシロサイ亜種はキタシロサイ(C. s. cottoni)で,この亜種は「深刻な危機(おそらく野生絶滅)CR(PEW)」のままである。シロサイは,より大きな角を持ち,より開けた環境に生息し,発見することが容易なので,クロサイよりも密猟の対象となりやすい。

犀角の違法国際取引のためのアフリカのサイの密猟がこの2種にとっての主要な脅威であり続けている。しかし,近年の生息国,土地所有者および地域社会によりとられた強力な対抗措置により,明らかな効果が見られている。近年,アフリカ大陸全体でサイ2種の密猟が減少している。2015年が密猟のピークで,最低1,349頭,つまり1日当たり3.7頭のサイが密猟された。それ以来,密猟数は年々減少していった。2018年には最低892頭のサイが密猟された。これは1日当たり約2.4頭,10 時間に1頭に相当する。2019年の予想データは,密猟レベルはさらに減少していることを示している。

「国境を越えた密猟犯罪組織の関与で,サイをめぐる犯罪は単なる野生生物犯罪に留まらない。密猟の裏に潜む組織犯罪と戦うために,政府のハイレベルを含む政府全体の課題として取り組んでいる多くの生息国による努力は称賛に値する。この好ましい密猟減少が続くならば,サイの個体数によい影響を与えるはずである。この傾向を維持するには,資金と努力の継続的な投入が必要である」とIUCN種の保存委員会アフリカサイ専門家グループのレッドリスト当局コーディネータのリチャード・エムズリー博士は言う。

わずかではあるが,保全努力により近年サイ密猟レベルが減少したが,この10年でサイを安全に守っていくための経費が大幅に増大し,サイの生体の販売価格が大きく減少してしまった。それにより,個人所有者と地域社会がサイを保護しようとするインセンティブが減じた。現在,シロサイの50%,クロサイの40%近くが私有地や地域社会管理地で保護されており,彼らはサイを費用のかさむ負債とみなす傾向にあり,これがサイの分布範囲と個体数の増加の障壁となったり,あるいは減少させる恐れもある。

写真と統計(要約)のダウンロードはココ

参考となる引用文:

「今回のIUCNレッドリスト更新版に追加された種のうち、65%は我が社からの助成で評価されたことを光栄に思います。この最新情報は、ポスト2020生物多様性枠組みの一環として保全へのコミットメントを伝える上で、社会全体にとって非常に価値のあるものになるでしょう。」とトヨタ自動車の山戸昌子環境部長は述べた。

 

より詳しい情報やインタビューの申し込みは下記まで:

Harriet Brooker, IUCN Media Relations, +44 7960 241862, harriet,brooker@iucn,org
Matthias Fiechter, IUCN Media Relations, +41 79 536 0117, matthias,fiechter@iucn,org
 

編集者への注

IUCNレッドリスト: IUCN絶滅危惧種レッドリスト™』は「2011-2022生物多様性戦略計画(愛知目標)」の目標12の達成に貢献している。目標12:  2020年までに,既知の絶滅危惧種の絶滅が阻止され,特に衰退が最も顕著な生物の保全状況が改善され,維持される。

IUCN–トヨタパートナーシップ: 2016年5月に発表されたIUCNとトヨタ自動車との5年間パートナーシップにより,世界の人口の大部分にとって重要な食糧源である多くの種を含め全体で28,000種以上の生物種の絶滅リスクに関する知識が大幅に向上した。このパートナーシップは「トヨタ環境チャレンジ2050」に基づくもので,自動車の負の影響をゼロにまで減らし,同時に社会にプラスの影響を与えることを目指している。

IUCNレッドリスト

2020-1 IUCN絶滅危惧種レッドリストに関する世界的な統計数値:

評価された合計種数 = 116,177

(絶滅危惧種総数 = 31,030)

絶滅(EX = 878

野生絶滅(EW= 75

深刻な危機(CR = 6,523

危機(EN= 11,067

危急(VU = 13,440

準絶滅危惧(NT= 6,976

低リスク/保全依存 = 190 (これは旧カテゴリーで, IUCNレッドリストからは次第に消えて行っている)

低懸念(LC = 59,874

データ不足(DD = 17,154

上に示した数字は,今日までにIUCNレッドリスト用に評価された種に限られている。世界に生存する種がすべて評価されたわけではないが,IUCNレッドリストは今日,種に何が起こっているかの有益な概観を提供し,保全行動が緊急に必要であることを強調するものである。IUCNレッドリスト掲載の多くの分類群について,絶滅危惧種の相対的な割合を明示することはできない。というのは,包括的にすべての種を評価したものではないからである。これらの種群の多くで,評価努力は特に絶滅危惧種に焦点を当てたものであり,それゆえ,これらの種群に占める絶滅危惧種の割合は,ひどく偏ったものとなっている。

すべての種が包括的に評価された分類群では,絶滅危惧種の割合を計算することができる。しかし,絶滅危惧種の実数は,しばしば不確実である。というのは,データ不足種(DD)が実際に絶滅危惧なのかどうかわからないからである。それゆえ,上に示した割合は,包括的に評価された分類群(絶滅種を除く)に関する絶滅リスクの最善の推定値である。これは,データ不足種はデータが十分な種と同じ割合で絶滅危惧であるという仮定に基づいている。換言すれば,これは,絶滅危惧種x %(DD種はすべて絶滅危惧でない)からy %(DD種はすべて絶滅危惧である)までの範囲にある中央値でもある。利用できる証拠に基づけば,これが最善の推定値である。

IUCNレッドリストの危惧のカテゴリーは,以下のとおり。上のほうが危惧が高い。

「絶滅EX」または「野生絶滅EW

「深刻な危機CR,「危機EN」,「危急VU: 地球規模で絶滅危惧にある種。

「準絶滅危惧NT: 絶滅危惧カテゴリーの閾値に近い種,もしくは現在の保全措置が中止されると絶滅危惧になる種。

「低懸念LC: 絶滅の危険性が低いと評価された種。

「データ不足DD: 不十分なデータのため評価できなかった種。

「深刻な危機CR(絶滅した可能性): これは新しいIUCNレッドリストカテゴリーではないが,おそらくすでに絶滅しているものの,最終確認を必要とする「深刻な危機CR」種を特定するために設けられた標識である。たとえば,より広範な調査を実施することにより,個体を発見することができないことを確認する必要がある。

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